笹野一刀彫で知られるお鷹ぽっぽの歴史や作り方、価格に至るまで徹底解説
昔から伝統的に作られてきた郷土品は、素朴で温かさがあり、またその地域の歴史を感じます。各地域にそれぞれ郷土品があり、お土産などで販売されている物もありますね。そんな古くから作られてきた地域の郷土品の1つが、山形県の「お鷹ぽっぽ」です。伝統工芸品を作ってきた職人さんが1つずつ丁寧に手掘りで作るお鷹ぽっぽは海外の方からも人気の工芸品となっています。
お鷹ぽっぽとは
お鷹ぽっぽは郷土の伝統工芸
お鷹ぽっぽは山形県米沢市笹野地区で作られてきた伝統的な木彫玩具です。笹野一刀彫を代表するお鷹ぽっぽはたった1つの刃物を利用して作ります。切り出した木をサルキリという刃物一刀で作り上げる様子は圧巻です。
木彫りの民芸品は日本各地で作られていますが、通常木彫りを行うときには、様々な種類の刃物を使って作り上げます。大きな刃物は木を作りたい物にあわせて大雑把に形作る時に利用し、その後の細かい細工は作る部分や削り取る木の量などを考えて色々な刃物を使うのです。しかしお鷹ぽっぽは最初から最後まで、1種類の刃物、サルキリで作り上げます。
お鷹ぽっぽの繊細な鷹の羽も、大きなサルキリの刃先を器用に使い、一刀で一羽を作ります。手に迷いなくどんどん彫り進めていく様子はやはり名人。ただの1本の高木があっという間に鷹の形になり、見る見るうちに命が吹き込まれるように1つの形となっていきます。
サルキリはとても大きな刃物で、玩具を作るとはとても思えないような形状です。鷹山と呼ばれる笹野一刀彫の職人さんは、この大きな刃物を巧みに操り、素朴で美しい伝統的木彫玩具お鷹ぽっぽを作ります。作り上げる時間は数分。木の形を見て、顔の向きなどを考え刃物一刀で作り上げるというのですから、年季の入った職人さんはさすがです。
海外の方にも好評な実演販売も
日本の伝統工芸品は、日本国内だけではなく、世界からも注目されています。職人さんたちは海外に実演販売に行くこともあるようですが、お鷹ぽっぽの職人さんも海外で実演販売をしてきました。アメリカ、ブラジル、台湾、様々な国でお鷹ぽっぽという日本の伝統工芸の技を見せてきたのですね。
中でも台湾は実演販売に列ができるといいます。毎日買いに来る人もいるといいますから、その職人技に惚れ込んでしまったのでしょうね。サルキリという大きな刃物を使い、どんどん1つの作品を彫り上げていく様は、確かに迫力も繊細さもあり、まるでマジックの様です。細かい作業もサルキリの刃先を巧みに使い彫り上げていくのですから、引き込まれるのも無理はありません。お鷹ぽっぽの場合、その場で彫り上げて商品になるのですから、世界に誇れる工芸品といえるでしょう。
お鷹ぽっぽとコシアブラ
皆さんはコシアブラという山菜をご存知でしょうか。コシアブラは山菜の1つで、山菜が好きな人ならご存知でしょう。このコシアブラは古くから食材以外にも、コシアブラの木の樹脂を絞り、それを濾して塗料として利用されてきました。お鷹ぽっぽでは、このコシアブラの木を材料にして作ります。
コシアブラの木は幹がブナの様に白いのが特徴で豆腐の木とも呼ばれています。また冬場、食べ物が少なくなった雪の森で、コシアブラの木はウサギの好物だそうです。冬になってコシアブラの木を見つけると、ウサギは芽まできれいにかじってしまいます。そのためコシアブラは豆腐の木という別名のほか、ウサギカジリという呼び名も持っています。
材が柔らかく、一刀彫の材料として最適な材です。柔らかい材だからこそ、鷹の翼をサルキリで細かく切りだすことができるのでしょう。もちろん柔らかいといっても木ですから、彫る時には力が必要ですし、サルキリという大きな刃物をまるで自分の手のように使ったり、鷹の顔などを掘り出したり、翼を細かく細工するのは熟練の技術が無ければなし得ません。
お鷹ぽっぽを作る職人さんごとに作る顔に特徴がありますが、木によって顔の向き、顔の表情などが変化しているのもお鷹ぽっぽの魅力です。大量に作ることができる現代の玩具はすべて同じ形になりますが、手作りで1点ずつ作るお鷹ぽっぽは1つずつ違うのです。お土産にもいいのですが、お子さんに世界にたった1つの伝統的な玩具をあげるのもおすすめです。
職人さんの努力・少しずつ新しいものも
伝統工芸品は古くから作られてきたものを伝承するという役割も持っていますので、昔ながらの玩具を作ることは重要です。作られている職人さんたちは皆さん、お客さんが喜んでくれる物、1つしかないものを作ることが原点といいます。6代目の鷹山、戸田寒風さんは廃材や木の枝、末端などを利用してお鷹ぽっぽを作ったこともあるそうです。
木の皮をそのまま活かしたお鷹ぽっぽなども作るなど、今までとは違う挑戦もされています。同じものを作っても同じものを何度も飾る人は少ないと考えて、こうした新しいチャレンジをしてきたのです。伝統を継承することは重要、でも新しいものを作っていかないと伝統を守ることができない、こうしたお鷹ぽっぽに対する深い思いをもって作り上げているのですね。
ただ、このお鷹ぽっぽという素晴らしい伝統工芸品作りも、後継者問題があります。若い人が興味をもち、習いに来てもなかなか長続きしない現実があるのだそうです。モノ作りは見ている人が思うよりもずっと大変で、なかなか上達しないものなのかもしれません。お鷹ぽっぽを作る職人さんたちが指導できる間に、是非ともこの素晴らしい技術を若い世代の方々が継承してほしいですね。
お鷹ぽっぽの歴史
米沢藩主上杉鷹山公が冬場、農民の副業としてこの工芸品作りを奨励したといわれています。魔除けのほか、縁起物として伝えられてきた工芸品は、現代も鷹山が丁寧に手作りで作っています。
元々農民の副業だった工芸品作りでしたが、6代目鷹山である戸田寒風さんが初めて本業にしたそうです。初めて携わったのは小学校5年生のとき。初めて手を切った時に、その痛みを忘れず、怪我をしないように覚えろと言われたといいます。
お鷹ぽっぽのぽっぽとは、アイヌの言葉で玩具という意味。現代の玩具とは全く違う玩具ですが、その昔、子どもたちはこうした素朴な玩具を大切に使っていたのでしょう。
上杉鷹山との関わり
上杉鷹山は、江戸時代中期の大名で出羽国米沢藩9代目藩主でした。領地返上寸前だった米沢藩の再生を促した人物であり、江戸時代の名君とも称されます。上杉鷹山は米沢が冬場雪に閉ざされ、農民たちが苦しい生活を送っていることを知り、雪に閉ざされた中でも作ることができるお鷹ぽっぽに注目し、副業として推奨しました。
お鷹ぽっぽには上杉鷹山の「鷹」という文字が含まれています。それを気に入ったことも推奨した理由ではないか?ともいわれていますが、当時の農民たちにとって冬場の救いとなったことは間違いないようですね。自らの鷹という文字が含まれていることで、魔除け、禄高(与えられる俸禄の額)が上がることでも推奨したと伝えられています。
また、上杉鷹山は「為せば成る、為さねばならぬ何事も」と説いたことでも有名です。お鷹ぽっぽについては、1つの刃物で掘るようにと指導したと言い伝えられています。いくつもの刃物を使うのではなく、たった1本の刃物、しかも大物を利用して作るところに、このお鷹ぽっぽの大きな魅力があると感じていたのでしょうか。こうした上杉鷹山という人物がいたからこそ、お鷹ぽっぽは山形の笹野地区で長きにわたり伝承されてきたのだと思います。
絵付けについて
お鷹ぽっぽには12種あり、味わい深い姿です。お鷹ぽっぽといえば鷹が有名ですが、このほかにクジャクや鶏、フクロウなども作られています。フクロウはアイヌの時代、魔除けの鳥、福を呼ぶ縁起のいい鳥として大切にされてきました。眼が大きく、ずんぐりしたお鷹ぽっぽのフクロウも作り手によって様々な風合いがあり、インテリアとして置かれていても素敵です。鷹はきりっと眼光鋭い眼が印象的で、まさしく家を守ってくれそうですね。
全てが手作りされているため、同じ色で絵付けされていても形が違いますし、表情もそれぞれです。複数の色が利用されている物や色があまり利用されていないものもあります。
最近はお鷹ぽっぽの絵付け体験をさせてくれるところもありますので、自分の好みの色で絵付けするのも楽しいですね。フクロウや鷹のほか、大黒天や個どり、鶏、うさぎや犬などユニークなものもあります。
価格帯
お鷹ぽっぽは大きさによって価格帯が変わります。また古玩具として販売されている物はお値段が少々お高めです。
○21.5?
値段:550円
○24cm
値段:580円
○50.5?
値段:1,100円
○79.5?
値段:1,000円
○レトロ 鳥 セット
値段:5,500円
○古玩具 戦前のもの 36?
値段:26,300円
○古玩具 戦前のもの 鶏
値段:2,100円
○古玩具 戦前のもの 鶏 農民
値段:6,750円
古玩具の中でも戦前に作られたもので大きさがあるものだと25,000円以上です。ミニチュアで伝統工芸品として作られたものであれば、セットで1,000円くらいの金額でオークションへ出品されていますので、お買い求め安いと思います。
また大きなものでも、オークションに出品されている物の中には、かなりリーズナブルなお値段で販売されている物もありお買い得です。
まとめ
どの地域にも伝統的な工芸品があり、そこには歴史があります。山形県米沢市笹野地区に古くから伝わってきた木彫り玩具「お鷹ぽっぽ」にも歴史があってこそ、ここに存在しています。昔は子どもが遊ぶ玩具として、現代は魔除けや縁起物として親しまれているお鷹ぽっぽ。これから先、この優しく温かな伝統工芸品が、ずっと作られていけばいいなと思います。私たちもこうした日本各地の伝統工芸品を理解し、たくさんの方に伝えていきたいですね。